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  「拝礼方位」について

 室津半島周辺には相当な年暦を経ていると思われる社寺が多く存在しています。

 そうした古来からの神社は拝礼方位というものが、とりわけ重要で、拝礼方位を

分析することによって、地域の歴史や社寺の由来をも導き出すことができます。

 日本の神社は本来、建物は無く、大自然のなかで祭祀されていました。

 雄大な山とか、大きな岩、巨木などを神の依代として崇め祭り、その山や大岩などに向かって

拝礼するわけですが、やがて風雨をしのぐために神社という建物が建てられます。それが今の

神社の原点でもあります。つまり、神社は山や岩などの依代に向けて建てられています。


 以上は、あくまでも基本的なことです。今までにも当然のごとく語られてきました。ところが、

その当然なことも、いざ実践となると、ほとんどが無視しているのが実状ではないでしょうか。

 せめて由来記録に社殿の向いている方向でも記してあれば、ある程度の目安になるのですが、

 今に至っても社殿の向いている方向を記してある由来記録はほとんど見当たりません。


     

 神社の拝礼方位の代表的な例として室津半島の賀茂神社五社があります。

 その五社の拝礼方向を図にしたのが上の図です。それぞれに方向性を持っています。

 神社に詣でた自分がどちらの方向に向かって拝礼しているか、またその方向には

どんなものがあるか、ということです。



 実践として、周防地域の社寺の多くは、前後左右を拝礼する十文字方位になっています。



 十文字方位の代表的な例。

熊毛郡田布施町大波野(おおはの)にある八幡八幡宮

 前後左右のすべてに古墳を拝礼しています。


 また、拝礼方位は鳥居にもあります。

八幡八幡宮の一の鳥居は天王原古墳を拝礼し、

二の鳥居は納蔵原古墳を拝礼しています。


こういうふうに鳥居や社殿の向きには意味があります。

古来は木造鳥居として継承されて来たのでしょう。

木造鳥居は約二十年位しかもちませんから、後代に石造鳥居へ建替えています。

建替えた時に立っていた位置で再建していれば多くのことがわかりますが、

 鳥居の多くは位置が動いている物が多く、すべての神社に適用できるとは限りません。



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以上は神社の拝礼方位について説明しました。こんどは寺院です。

 神社と寺院とでは主力方位が変わってきます。どう違うのかと申しますと、

神社の動かせない山や巨岩とは違い、寺院は仏像が主体です。

我々は仏像に向いて拝礼しますから、方向はどちらから向いて拝もうが自由です。

 ところが、寺院という建物が介在してくると、仏像の向きと拝礼する位置は固定化されます。

つまり、寺院の方向性が仏像の向きを決定する重要な要素を持っていることにななります。


 仏像は通常、守護していただく場所に向けて安置するのが一般的です。

我々が供養したい場所を仏様が見ていらっしゃる向きに安置します。

 寺に参詣する我々は仏像に向いて拝礼するわけですから、

供養や守護をしてもらっている場所には背を向けて拝礼します。

古い寺院はほとんどその形になっています。


 すなわち、神社と寺院とでは主力方位の前後関係が逆になります。

 神社は建物の背後方向が主力ですが、寺院は建物の前面方向が主力であるということです。




寺院の一例として、熊毛郡田布施町波野にある専福寺(上写真)は

前面方位が初代上宮跡地へ向いており、明瞭に出ています。






また、神社と同じように寺院にも十文字方位がありまして、

一例として、下写真の周防大島町にある大悲閣(通称・帯石観音)の

右方位は出雲の荒神谷遺跡を指しています。






応用として、稲荷はその主祭神であるウカノミタマが仏教も信心したことから、

 神道仏道どちらも合わせ持っています。稲荷に参詣しますと、神道の祝詞を

あげてもいいですし、般若心経などの經典をあげてもかまいません。

 そうした訳で、社殿の前後どちらも意味を持っています。

一例として、上写真の熊毛郡平生町にある人島稲荷(ひとじまいなり)は

前面方位が平生町田名にある神花山古墳を指しています。




以上は由緒の古い社寺のことであり、近代になって創建された社寺は、

立地的な問題や風水思想などの影響が入っています。日本古来は陰陽道です。

 また、周囲の家並みに合わせる意味において、拝礼方位は備わって

いないものもありますから、すべての社寺に適用できるものではなく、

その辺りは方位分析に慣れれば、古いか新しいかわかるようになります。




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